このシリーズでは、英文法を例文を使って分かりやすく解説します。今回のテーマは「形容詞」です。
「形容詞」とは、名詞を修飾する品詞です。例えば「優しい女性」「可愛い時計」「柔らかいお肉」のように、人や物の状態などを説明します。
形容詞の用法
形容詞には、「限定用法」と「叙述用法」の2つの用法があります。
形容詞の限定用法
形容詞の限定用法とは、名詞の前に形容詞を置いて、名詞を修飾する用法のことです。
形容詞を代名詞の前に置いて、代名詞を修飾することはできません。→ 「× tall him」「× blue it」
a beautiful painting(美しい絵)
※形容詞は、冠詞(a, an, the)と名詞の間に置きます。
a nice blue suit(素敵な青いスーツ)
He has a new car.
彼は新しい車を持っています。
Jack is eating a big steak.
ジャックは大きいステーキを食べています。
Ten young boys are playing soccer.
10人の若い男の子がサッカーをしています。
※形容詞は、数詞と名詞の間に置きます。
形容詞の叙述用法
形容詞の限定用法とは、第2文型「主語(S)+動詞(V)+補語(C)」の補語として、形容詞を用いる用法のことです。
The painting is beautiful.
その絵は美しい。
His suit is nice and blue.
彼のスーツは青くて素敵だ。
She is kind.
彼女は優しいです。
Indian food is spicy.
インド料理は辛いです。
Music makes people happy.
音楽は人を幸せにする。
複数の形容詞を並べる用法
複数の形容詞で名詞を修飾する用法を「累積形容詞」と呼び、複数の形容詞を並べる順番は以下のようになります。
限定詞 → 数量 → 主観的評価 → 大きさ → 形状 → 性質 → 色 → 生産地 → 材料 + [名詞]
【限定詞】
冠詞(a, the)、所有格(my, your, his, etc.)、指示形容詞(this, these, that, those)
【数量を表す形容詞】
two(2つ)、three(3つ)、four(4つ)
【主観的評価を表す形容詞】
nice(素敵な)、beautiful(美しい)、pretty(可愛い)、high quality(高品質な)
※主観的評価とは、人が主観的に表現できる形容詞のことです。
【大きさを表す形容詞】
big(大きな)、small(小さい)、large(大きい)、long(長い)
【形状を表す形容詞】
round(丸い)、triangle(三角の)、square(四角の)、wavy(波状の)
【性質を表す形容詞】
tough(丈夫な)、plain(飾りのない)、heavy(どっしりとした)、simple(シンプルな)
【色を表す形容詞】
white(白い)、brown(茶色の)、blue(青い)、silver(シルバー)
【生産地を表す形容詞】
Japanese(日本の)、American(アメリカ製の)
【材料を表す形容詞】
wooden(木製の)、metal(金属製の)、plastic(プラスティックの)、leather(革製の)
【名詞を形容詞として使う】
dog house(犬小屋)、dining table(タイニングテーブル)、dinner plate(ディナープレート)
※名詞を形容詞として使う場合は、修飾する名詞の直前に置く
以下の例文のように、複数の形容詞を用いて名詞を修飾する用法を「累積形容詞」と呼びます。
Nice long wavy blond hair
素敵な長いウエーブの金髪ヘアー
High quality tough leather bag
高品質で丈夫な革製のバッグ
Big brown American wooden desk
大きな茶色の、アメリカ製の木の机
Pretty simple small wooden dog house
可愛くてシンプルな、小さな木製の犬小屋
Beautiful small round wood dining table
美しい小さな丸い木製のダイニングテーブル
Large square heavy black plastic pot
大きな正方形の、どっしりとした黒色のプラスティックの鉢
Round plain white hard plastic dinner plate
丸くて飾りの無い、白くて硬いプラスティックのディナープレート
形容詞の種類
形容詞の種類は機能や用法によって12種類ぐらいに分類されます。この章では、指示形容詞、疑問形容詞、配分詞、所有形容詞、等位形容詞、固有形容詞、複合形容詞、数量形容詞、の8種類について解説します。
指示形容詞
指示代名詞(Demonstrative adjectives)のthis, these, that, those の形容詞用法が指示形容詞です。人や物を指示して限定するので「限定詞」とも呼びます。this(この), these(これらの)は空間的・心理的に、話者から距離が近い名詞を限定し、that(その), those(それらの)は話者から距離が遠い名詞を限定します。
例1
We are going to discuss these issues at the meeting.
私たちは会議でこれらの問題について話し合う予定です。
例2
Those houses were damaged by the typhoon.
それらの住宅は台風で被害を受けた。
疑問形容詞
疑問代名詞(Interrogative adjectives)のwhich、what、whose の形容詞用法が疑問形容詞です。「疑問形容詞+名詞」の形で使います。
which の用法
which は「どちらの、どれを」の意味で、限定された数の選択肢から「どれを?」と聞くときに使います。
例1
Which shirt is your favorite?
どちらのシャツがお気に入りですか?
例2
I forgot to ask him which plan was better.
私は彼にどちらの計画がより良いかを尋ねるのを忘れた。
例2のように、文の中に「which + 単数名詞」の連語で、間接疑問として使うこともあります。
what の用法
what は「何の、どの」の意味。「what + 単数名詞」の連語で不特定多数の選択肢から「どの?」と尋ねる時に使います。
例1
What color do you like the best?
あなたはどの色が一番好きですか?
例2
I have no idea what type of cakes she likes.
私は彼女がどんな種類のケーキが好きか分からない。
whose の用法
whose は「誰の」の意味。「whose + 単数名詞」の連語で、「誰の〜?」という疑問を表します。文頭や文中で使います。
例1
Whose shoes are these?
これは誰の靴ですか?
例2
Do you know whose car is parked in front of my house?
私の家の前に誰の車が停まっているか分かりますか?
配分詞
複数の人・物の中から、特定の人・物を指す形容詞のことを配分詞(Distributive)と呼びます。配分詞は every, each, neither, either, both です。配分詞を「不定代名詞の形容詞用法」や「不定数量詞」と呼ぶことがあります。
every, each
every は「すべての、あらゆる」の意味で、大きな全体から見て、その中の個々(個人)を指すイメージ。each は「それぞれの」の意味で、大きな全体を見ずに複数の物を1つ1つ指すイメージです。each の方が every よりも個別に焦点を当てているニュアンスです。
例1
She gave every child a piece of candy.
彼女は全ての子供に飴を与えた。
例2
I walk along the river every day.
私は毎日川沿いを散歩する。
例3
Each stationery in the store is sold for 100 yen.
その店ではそれぞれの文房具が100円で売られている。
例4
Each letter was written with a fountain pen.
それぞれの手紙は万年筆で書かれている。
neither, either, both
2つの対象から特定の人・物を示す場合は、neither, either, both のいずれかを使います。
neither の用法
neither は2つの対象について「どちらも〜ない」という場合に使われます。「neither + 単数名詞」で使います。
例1
My father won’t choose neither option.
私の父はどちらのオプションも選択しないだろう。
例2
Neither time works for me.
どちらの時間も都合がつかない。
either の用法
eitherは、2つ(2人)の対象について「どちらか一方の〜、どちらでも」を表します。「either + 単数名詞」で使います。
例1
You can take either book.
あなたはどちらの本でも取ってよい。
例2
I don’t know either actor.
私はどちらの俳優も知らない。
否定文の either は「どちらの〜もない」の意味。
both の用法
both は、2つ(2人)の対象について「両方とも」を表します。
例1
I fell down and broke both arms.
私は転んで両腕とも骨折した。
例2
Both the people came to the party.
2人ともパーティーに来た。
例2のように、名詞の前に「冠詞の the」「限定詞の these, those」「所有格」のいづれかがある場合は、それらの前にbothを置きます。
所有形容詞
所有形容詞(Possessive adjectives)とは、名詞の前に置いて、人・物に所有されていることを表す形容詞です。my, your, his, her, its, our, their が該当します。
人称代名詞 I, you, he, she, it, we, they の所有格は、my, your, his, her, its, our, their です。所有格と所有形容詞は同じ単語を指します。
their の用法
their は they の所有格で「彼らの」「彼女らの」「それらの」の意味を表します。
例1
Their relationship is stronger than anything.
彼らの関係性は何よりも強い。
例2
Students were told to switch off their computers.
生徒たちはパソコンの電源を切るように言われた。
its の用法
its は it の所有格で「その」「それの」の意味を表します。
例1
The cat bit its tail.
その猫は自分の尻尾を噛んだ。
例2
Japan should provide monetary assistance for its citizens.
日本は国民のために金銭的援助をするべきだ。
等位形容詞
上記の「複数の形容詞を並べる用法(累積形容詞)」で説明した通り、1つの名詞を複数の形容詞で修飾する場合、形容詞は以下の順番で並べます。
限定詞 → 数量 → 主観的評価 → 大きさ → 形状 → 性質 → 色 → 生産地 → 材料 + [名詞]
この中で「性質」に関する形容詞は、以下の例のように1つの名詞に対して複数使う場合があります。この用法を「等位形容詞」と呼びます。
累積形容詞の用法では形容詞を並べる順番が決まっていますが、等位形容詞の用法では単語の並べ替えが自由にできる点が特徴です。
例1
Amy is a blonde, blue-eyed, white woman.
エイミーは金髪で、青い瞳の、白人の女性です。
blonde, blue-eyed, white は女性の性質を説明している。
例2
He lived in the wooden, two-story, old apartment.
彼は木造の、二階建ての、古いアパートに住んでいました。
wooden, two-story, old はアパートの性質を説明している。
例3のように two-story と old の間に and を置くことも可能です。
例3
He lived in the wooden, two-story and old apartment.
彼は木造の、二階建ての、古いアパートに住んでいました。
固有形容詞
固有形容詞(Proper adjectives)とは、固有名詞に由来する形容詞のことです。場所や人の固有の名前が基となって作られた形容詞であるため、一般的に語頭は大文字です。固有形容詞には大きく2つに分類できます。
場所の名前(国、大陸、地域、街など)に由来する単語:
Asian(アジアの)、Amazonian(アマゾンの)、Antarctic(南極の、南極地方の)、など。
人の名前に由来する単語:
Buddhist(仏教の、仏教徒の)、Darwinian(ダーウィンの)、Shakespearean(シェークスピアの)、など。
複合形容詞
複合形容詞(Compound adjectives)とは、2以上の複数の語がハイフンでつながれた形容詞のことです。以下の品詞の組み合わせでよく使われます。
数字+単数名詞:
a two-week vacation, a five-page document
形容詞+単数名詞:
last-minute, short-term
形容詞+現在分詞:
good-looking, long-lasting
名詞+現在分詞:
mouth-watering, eye-catching
名詞+形容詞:
eco-friendly, world-famous, smoke-free
名詞+過去分詞:
wind-powered yellow-striped
副詞+過去分詞:
densely-populated, well-known
形容詞+過去分詞:
fast-paced, old-fashioned, open-minded
3単語以上の組み合わせ:
down-to-earth, out-of-date, state-of-the-art
数量形容詞
数量形容詞(Quantitative adjectives)には不特定の数・量を表す「不定数量詞」と、数を表す「数詞」があります。
※数量形容詞は次の章で詳しく解説します。
数量形容詞
数量形容詞には不特定の数・量を表す「不定数量詞」と、数を表す「数詞」があります。
数を表す不定数量詞
a few, few, many, several は不特定の数を表し、可算名詞(数えられる名詞)の前に置くことができる。
例1
The company have a few excellent managers.
その会社には何名かの優秀な管理者がいる。
a few は「いくらかの、少しの」の意味。
例2
The company have few excellent managers.
その会社には優秀な管理者がほとんどいない。
few は「ほとんどない、わずかしかない」の意味。
例3
My colleague made a few mistakes in the negotiation with a client.
私の同僚は取引先との交渉で、いくつかの失敗を犯しました。
例4
My colleague made few mistakes in the negotiation with a client.
私の同僚は取引先との交渉で、殆ど失敗をしなかった。
例1と例3の a few は「少しはある」の意味で肯定的です。ここでの注意点は、例1の文意(文全体の意味)は肯定的ですが、例3の文意は否定的です。
例2と例4の few は「ほとんどない」の意味で否定的です。ここで注意点は、例2の文意は否定的ですが、例4の文意は肯定的です。
例5
I have many books about American culture.
私はアメリカ文化に関する本をたくさん持っている。
many は「たくさんの、多くの」の意味。例5の many は several に置き換え可能です。several books で「数冊の本」と訳します。several は「いくつかの」の意味です。several 「3つ以上だが many よりは少ない数」のニュアンスです。
量を表す不定数量詞
much, a little, little は不特定の量を表し、不可算名詞(数えられない名詞)の前に置くことができる。
例1
The founder started his own business with a little money.
その創業者は少しの資金で自分のビジネスを始めた。
a little は「少しの、少量の」の意味で肯定的。
例2
The founder started his own business with little money.
その創業者は資金がほとんどない状態で自分のビジネスを始めた。
little は「ほとんどない、わずかしかない」の意味で否定的。
例3
American college students don’t have much time to work at a part-time job.
アメリカの大学生はアルバイトをする時間があまりありません。
否定文・疑問文での much は「多くの、たくさんの」の意味。肯定文では much よりも a lot of を使います。 また so much, too much, how much, as much as, as much A as B, などの連語の場合は肯定文で使います。
数・量を表す不定数量詞
some, any, enough, all, no は不特定の「数」または「量」を表す形容詞で、可算名詞と不可算名詞の両方の前に置くことができる。
Some の用法
some は「いくつかの」の意味で、数・量を漠然と表します。主に肯定文で使います。
例1
Some breeds of birds dive into the sea to catch fish.
いくつかの鳥の品種は、海に潜って魚を捕る。
Any の用法
any は否定文・疑問文・肯定文の、それぞれで意味が異なります。
否定文
例1
1) You shouldn’t leave any trash at campsites.
どんなゴミでもキャンプ場で捨てるべきではない。
否定文での any は「どんな、少しの」の意味。
例2
I don’t have any pets.
私は全くペットを飼っていません。
“not ~ any” で「まったく~ない」の意味。例3のように“not ~ any” は “no” と置き換え可能です。
例3
I have no pets.
私は全くペットを飼っていません。
疑問文
例4
Are there any questions?
何か質問はありますか?
疑問文での any は「何か、誰か」の意味。
例5
Do you have any green bags?
あなたは何か緑色のかばんを持っていますか?
次の例のように any を some に置き換えると、「はい、持ってます」の答えを期待しているニュアンスが出ます。
例6
Do you have some green bags?
あなたは何か緑色のかばんを持っていますか?
肯定文
例7
Any member of the club can participate in the event.
クラブのメンバーは誰でもそのイベントに参加できる。
例8
You can order any dish from the menu.
あなたはメニューにあるどの料理でも注文できます。
肯定文での any は「誰でも、どれでも」の意味。通常 any の後には単数形の名詞が続きます。any が指す人数(個数)は3人(3つ)以上です。2人(2つ)の場合は both を使います。
例文で学ぶ英文法 (目次)
副詞の英文法解説
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