このシリーズでは、英文法を例文を使って分かりやすく解説します。今回のテーマは「冠詞」です。
冠詞とは、単数形の加算名詞の前に置き、その名詞が特定のものか、不特定のものかなどの情報を表す、形容詞に近い単語です。
冠詞の用法は、「定冠詞(the)」「不定冠詞(a, an)」「無冠詞」の3種類あります。
定冠詞
英単語の「the」には、同じ種類の物が2個以上存在する中から、1つを特定する働きがあります。英文法では「the」を「定冠詞」と呼びます。
日本語の文法には「定冠詞」はありませんが、日本語でも「そのリンゴ」、「あの映画」など、名詞の前に「その~、あの~」を付けて名詞を特定しています。
定冠詞の基本
定冠詞の「the」は会話の中で、会話の参加者が、「どの物」や「どの事」について話しているか特定できる場合に使います。
特定できる場合[1]
世の中に1つしか存在しない名詞:
The moon is bright tonight.
今夜は月が明るいです。
地球の衛星「月」は1つしか存在しないので、会話の参加者は特定できます。
特定できる場合[2]
会話の中で1度でも登場した名詞:
【Aさんの会話】
I ate an apple and a cake.
私はリンゴとケーキを食べました。
The apple was delicious, but the cake was too sweet.
リンゴは美味しかったですが、ケーキは甘すぎました。
リンゴとケーキの話題は、Aさんの1つ目の発言で登場しているので、2つ目の発言での「リンゴとケーキ」は、「Aさんが食べたリンゴとケーキ」だと会話の参加者は特定できます。
特定できる場合[3]
会話の流れから特定できる名詞:
【Aさんの会話】
I saw a movie yesterday.
昨日映画を見ました。
The ending was very moving.
エンディングはとても感動的でした。
2つ目の発言での「エンディング」は初めて登場する名詞です。しかし会話の参加者は、会話の流れから「Aさんが見た映画のエンディング」であるということを特定することができます。
上記の3つ例のように、特定できる名詞の前には、定冠詞の「the」を付けます。
また定冠詞は、可算名詞(単数形・複数形)と不可算名詞の両方で使えます。
○ the book (可算名詞の単数形)
○ the bananas (可算名詞の複数形)
○ the information (不可算名詞)
定冠詞の用法
ここでは主な定冠詞の用法を解説します。以下の条件の場合、名詞に定冠詞を付けます。
[1] 前に1度でも登場し、特定できる
I bought a car. The car is very economical.
私は車を買った。その車は燃費がいい。
[2] その場の状況から明白で、特定できる
Where is the station?
駅はどこですか。
※周辺に駅が1つしかない前提で考えると特定できます。
[3] 修飾句(of+名詞)で特定、又は、限定される
the window of my room
私の部屋の窓
The people of Washington
ワシントンの人々
The picture of my mother
母の写真
[4] 修飾句(関係詞)で特定、又は限定される
I have lost the money which you lent me.
私はあなたが貸してくれたお金を無くしました。
[5] 形容詞の最上級が付く名詞
Asia is the largest continent on earth.
アジアは地球上で一番大きな大陸です。
[6] 「only, first, last」が付く名詞
He was the first man who walked on the moon.
彼は月の上を歩いた最初の人間です。
[7] 世の中に1つしかない
The earth is round.
地球は丸い
We’re going to the south.
私たちは南に向かっている。
the sky(空)、the world(世界)、the moon(月)、the sun(太陽)
[8] 時間帯(前置詞+the+名詞)
He usually drinks coffee in the morning.
彼はいつも朝にコーヒーを飲む。
[9] 体の部分(前置詞+the+名詞)
He took me by the arm.
彼は私の腕を掴んだ。
※「by my arm」だと「me」との重複表現になるので、「by the arm」とします。
look~in the eye(目を見る)、kiss~on the cheek(頬にキスをする)
[10] 川・海・砂漠・海峡
the Amazon(アマゾン川)、the Pacific Ocean(太平洋)、the Seikan Tunnel(青函トンネル)
[11] 鉄道・船・飛行機
the Shinkansen(新幹線)、the Titanic(タイタニック号)、The Boeing 737(ボーイング737)
[12] 公共の建築物
the White House(ホワイトハウス)、the Hilton Hotel(ヒルトンホテル)、the Smithsonian Museum(スミソニアン博物館)
[13] 列島・山脈の複数形の固有名詞
the Japanese Islands(日本列島)、the United Nations(国際連合)、the Alps(アルプス山脈)、the Smiths(スミス家)
[14] ~の総称を表現する
The crocodile is a large aquatic reptile.
クロコダイルは大きな水生爬虫類です。
The whale is in the category of mammals.
クジラは哺乳類に属する。
[15] 単位を表す(by the 単位)
They sell rice by the kilo.
コメはキロ単位で売られている
I get paid by the week.
私は週単位で給料をもらっている。
不定冠詞
不定冠詞の「a, an」の基本的な意味は、複数存在する物(または人)の中の1つ(1人)という意味です。
特定されていない単数形の可算名詞の前には、「a/an」を付けます。
不定冠詞の基本
以下の例文を見てください。会話の中で映画の話題が初めて登場する場合、その時点では、何の映画なのか特定されていないので、「movie」の前に不定冠詞の「a」を付けます。
I saw a movie yesterday.
昨日映画を見ました。
不定冠詞は、可算名詞の単数形の場合のみに使えます。複数形の可算名詞、及び、不可算名詞と一緒に使うことはありません。
× a bananas (複数形の可算名詞)
× an information (不可算名詞)
○ a book (単数形の可算名詞)
不定冠詞の用法
ここでは主な不定冠詞の用法を解説します。以下の条件の場合、名詞に不定冠詞を付けます。
[1] 「1つの」と表現する
There is a book on the desk.
机の上に一冊の本がある。
※「a, an」は、「one」と置き換えができます。
[2] 「ある~」と表現する
In a sense, your idea is correct.
ある意味、あなたの考えは正しいです。
[3] 総称として表現する
A triangle has three sides.
どんな三角形にも、3辺ある。
※any(どれでも)と似ている用法です
[4] 「~につき」と表現する
I meet my family twice a month.
私は家族に2か月に1度会う。
[5] 「多数の~」と表現する
Vitamins play a number of important roles in the body.
ビタミンは体の中で、多くの重要な役割を果たす。
※「a number of~」 は「(漠然と)多数の、いくつかの」という意味です。
※「the number of ~」は「~の数」という意味です。
[6] 「~の製品、~の作品」と表現する
Is that car a Ford or a BMW?
あの車はフォードですか、それともBMWですか。
[7] 「~のような人」 と表現する場合
She is a Mother Teresa.
彼女はマザーテレサのような人です。
※この場合は「a/an + 有名人」となります。
[8] 「~という人」 と表現する
A Mr. White came to see you.
ホワイトさんという人があなたに会いに来ました。
※この場合は「a/an + 一般人」となります。
[9] 「~家の一員」 と表現する
He is a Kennedy.
彼はケネディ家の一員です。
「a」と「an」の使い分け
「a」と「an」の使い分けは、後に来る名詞の発音で決まります。名詞が子音で始まる場合は「a」を使い、母音で始まる場合は「an」を使います。
子音か母音かの判断は、概ね単語のスペルで判断できます。名詞の頭文字が「a, e, i, o u」の場合は「an」、それ以外の場合は「a」を使います。
an apple(リンゴ)、an umbrella(傘)、a ball(ボール)、a dog(犬)
少ないですが、単語の頭文字が「a, e, i, o, u」でも発音が子音の単語があります。この場合は「a」を使います。
a university(大学)、a uniform(制服)、a unit(単位)
無冠詞
特定されていない複数形の可算名詞や、不可算名詞の場合は冠詞を付けません。
基本的に単数形の可算名詞は冠詞を付けますが、特定の名詞や慣用句では、冠詞を付けない「無冠詞」という用法があります。
無冠詞の用法
ここでは主な無冠詞の用法を解説します。以下の条件の場合、名詞は無冠詞になります。
[1] 抽象名詞は無冠詞
kindness(親切)、happiness(幸福)、success(成功)、love(愛)
[2] 物質名詞は無冠詞
air(空気)、water(水)、iron(鉄)、gold(金)、cheese(チーズ)、meat(食肉)、bread(パン)
[3] 固有名詞は無冠詞
London(ロンドン)、August(8月)、Venus(金星)、Saturday(土曜日)
[4] 学科名は無冠詞
I majored in physics at university.
私は大学で物理学を専攻していた。
[5] 朝食・昼食・夕食は無冠詞
I have breakfast every day.
私は毎日朝食をとります。
※lunch(昼食)、dinner(夕食)
[6] 「by + 交通手段」は無冠詞
They commute by bus.
彼らはバスを利用して通勤している。
※by train(列車で)、by subway(地下鉄で)
[7] 「by + 通信手段」は無冠詞
We are keeping in touch by e-mail
私たちは電子メールで連絡を取り合っています
※by letter(手紙で)、by telephone(電話で)
[8] 建物が目的や機能を表す
She went to supermarket to buy food.
彼女は食料を買いにスーパーマーケットへ出かけた。
※go to college(大学に通う)、be in class(授業中で)
[9] 役職や身分を表す名詞が「補語」
We elected him president.
私たちは彼を大統領に選んだ。